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10月, 2013の投稿を表示しています

実際に早くなっています!~災害モードのスイッチ~

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町田です。 気がつくと10月もあと1日になりました。年賀状印刷やおせちなど年末を意識した広告が少しずつ目に入るようになってきました。まだまだ年末モードのスイッチを入れる気分でもありませんが、それよりもここ数年のハロウィーンの盛り上がり方に驚くばかりです。 10月27日のブログで当院の災害モードのスイッチをいかに早く入れるかについて書かせていただきました。 →  http://drheli-gunma.blogspot.jp/2013/10/blog-post_27.html 実はここ約1ヶ月の間に、高速道路での交通事故で多数傷病者発生が疑われる事案に対して県警から情報提供のホットラインが入ることが3回ありました。 すぐに上記のフローチャートにのっとり情報収集チームを立ち上げ、DMAT参集、災害対策本部設置の可否を素早く判断しました。 時間経過における結果は以下の通りです。 ・1件目:警察の情報提供から10分後にDMAT参集不要と判断。ただしドクターヘリで対応。 ・2件目:警察の情報提供から6分後にDMAT待機メール配信。 ・3件目:警察の情報提供から4分後にDMAT待機メール配信。 最終的には3件ともDMATの出動は幸いありませんでしたが、明らかにスイッチを入れるスピードが速くなりました。 救急科医は迅速な決断が求められることが多々あります。しかし迷って何もしないより、まずは動くことが大切です。消防本部に対してドクターヘリ要請にオーバートリアージを許容するように、医療チームもオーバートリアージを恐れない判断が必要な時もあります!

富山での講演会に参加しました。

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4 月から勤務している菊川です。初めての投稿になります。  去る 10 月 19 日、昨年度まで勤務していた富山県厚生連高岡病院の廣田救命センター長からお招きいただき、中野先生と「呉西 ER フォーラム」で講演をさせていただきました(呉西とは富山県西部のことです)。    私は「前橋赤十字病院での診療内容」と題して、当院での ER 、 ICU 、病棟、災害医療、ドクターヘリ+αの活動の様子をお話させていただきました。   菊川「前橋赤十字病院での診療内容」    中野先生は「ドクターヘリ、群馬県に本当に必要?」と題して、ドクターヘリの概要、具体的な活用方法、費用対効果などについて御講演されました。さらに、関越道バス事故の際の対応についてお話をいただきました。 中野先生「ドクターヘリ、群馬県に本当に必要?」    講演の後は懇親会を開いていただき、富山の美味しい料理をいただきながら楽しく情報交換ができました。 たくさんの方々に御参加いただきました    このような機会をもち互いの良い点を取り入れ、それぞれの地域の医療体制をさらに向上できると嬉しいですね。今後ともよろしくお願いいたします。

もう出遅れないために・・・~当院の災害モードスイッチ~

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町田です。 昨日未明に福島沖で発生した地震ですが、関東地方でも数分にわたり長い時間揺れつづけました。台風に伴う降雨量が最も多い時間帯でもあったため、さらに眠れない夜を過ごした方も多かったことと思われます。 台風、地震ともに大きな人的被害はなく一安心ですが、とかくこの10月は「異常気象のせい」と一言では片づけてはいけないような異常事態です。いつでも災害対応スイッチが入れられるように備えておかなければいけませんね。 当院では昨年の関越道バス事故対応での初動の遅れがあり、ものすごい反省のも県庁、消防、警察と一体となって「災害モードスイッチ」を早く入れるための体制の見直しを行いました。 特に地震など体感できるような場合はスイッチを入れやすいのですが、交通事故などの局地災害はなかなか情報が入ってこない場合があります。 多数傷病者の発生が予想されることが起こった場合に、まず情報が早くはいってくるように警察から当院ホットラインに直接情報提供ができるルートを作りました。 特に高速道路の事故については消防より警察からの情報提供の方が早い傾向があります。 警察からの情報提供のポイントは「キーワード」です。 警察や消防などからのホットラインからの情報、自然災害などではニュース速報、インターネットまたの情報、体感した印象から多数傷病者対応や大規模災害が予想された時は、当院ではERリーダーを中心にすぐに『情報収集チーム』を立ち上げ、10分の制限時間内に「災害対策本部立ち上げ」「DMAT参集」の可否を判断します。(尚、10分たっても決められないときは自動的に災害対策本部立ち上げ、DMAT参集を行います。) 先日も高速道路で多数傷病者が発生している可能性があるバス事故があり、真っ先に警察から当院に情報提供がありました。当院はすぐに情報収集チームを立ち上げて消防本部へ問いあわせをした結果、災害対策本部立ち上げもDMAT参集は不要と判断しましたが、ドクターヘリ対応は必要と判断し消防にドクターヘリ要請を依頼しました。(あくまで消防からの要請がないとドクターヘリが出動できないところは痛いところです・・・やはり現場が混乱しているとヘリ要請が遅れる傾向にあります。) 情報収集チームの立ち上げはオーバートリアージでもOKです。 10分以内にスイッチのオン/オフを決断です

またもや台風が・・・きちんと準備しています。

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台風27号が日本の南を急にスピードを上げて東に向かっています。 今回は最初はかなり遅い速度で進んでいて、しかも秋雨前線を伴っていたために西日本各地で大雨をもたらしています。群馬も前線の影響で今週はずっと天候不良でした。 伊豆大島のニュースを見ると、自衛隊、消防、警察の皆さんとともに、東京のDMATや日赤救護班が現地で活動しています。悪天候の中で本当にご苦労様です。 今週末は群馬県災害医療訓練の予定でしたが、伊豆大島を始め各地で行われている台風への対応にいつでも協力できるように、訓練は中止してきちんと準備しています。 これ以上の大きな被害が起こらないことを願っています。 群馬も今日は朝からずっと雨です。 明日の朝にかけてが雨のピークです・・・ 当院の備蓄倉庫です。 いつでも準備OKです。

『1st APELSO 2013 in Beijing』に参加しました!

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みなさん、こんにちは。鈴木です。 2013 年 10 月 12 日と 13 日の 2 日間、北京で行われた the 1 st conference of Asia-Pacific Chapter of Extracorporeal Life Support Organization(AP-ELSO) に参加して来ました。   ELSO は ECMO に関する世界規模の歴史ある学会で、毎年秋に北米で総会が行われています。今回参加した APELSO はアジア・オセアニア地域を対象とした、いわば地方会です。   *今年5月に小倉先生が参加したEURO-ELSO in Stockholmの様子はこちらをどうぞ!  →  http://drheli-gunma.blogspot.jp/2013/06/euro-elso-in-stockholm.html   近年、 ECMO による治療が世界的に注目されており、このような地方会が行われるようになりました。 *「 ECMO って何?」という方は『 ECMO 研修 in スウェーデン』参照・・・  → http://drheli-gunma.blogspot.jp/2013/02/ecmo-in-vol1.html     http://drheli-gunma.blogspot.jp/2013/02/ecmo-in-vol2.html     http://drheli-gunma.blogspot.jp/2013/02/ecmo-in-vol3.html 学会では ECMO のレクチャーを聞いたり、シミュレーションに参加しました。いろいろ得るものがあり、また少しレベルアップ出来そうです。 シミュレーションで使用された人形、モニター、ECMO一式。結構リアル!   会場では ECMO 研修で大変お世話になったパルマー先生と再会しました。当院でも ECMO が定着しつつあることや当院の治療成績を報告したところ大変喜んでくれました。 会場でパルマ―先生と! 大気汚染の報道を良く耳にする北京ですが、屋外に出ることも少なかったため あまり実感はありませんでした。念のためマスクは多めに持っていたのですが使

好奇心旺盛!~小学2年生のドクターヘリ見学~

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町田です。 今日もあいにくの曇り空でしたが、朝からドクターヘリスタンバイでした。 午前中は隣県大学病院にお世話になりましたが、ヘリのお迎えから救急外来まで医学部生がちょうど実習に回っているところでした。懐かしい光景に若かりし頃を思い出し、初心に戻りながら前橋に帰還しました。 ヘリポートを開けていただきありがとうございました。 顔の見える関係・・・最高です! 前橋に戻ると病院近くの小学生の見学が待っていました。 『学校の近くに何があるか探検しよう!』という内容で当院に見学にきました。屋上ヘリポートに小学2年生35名がやってきました。 まずはヘリコプターよりも屋上からの景色に興味津々! 『県庁大きい~!』『学校見えるかな~?』 機長、整備士、当院地域連携課・社会課が屋上に案内するのにちょっとだけついて行きました。行ったついでに小学生に即興でドクターヘリの説明&質問タイム!すでにいろいろ勉強している児童もいて、たくさんのなかなか鋭い質問をいただきました。みんなとっても好奇心旺盛で、全員に順番にヘリの中の説明も行いました。 曇り空も吹き飛ばしてしまうようないきいきと輝く瞳が印象的でした! 「一緒に将来ヘリコプターでお仕事してくれる人?」の僕からの逆質問に、多くの児童たちが元気に手をあげてくれました(^O^)/とてもうれしかったのですが、その時には僕も還暦間近・・・現役で頑張れるように今から体力つくりをしないといけないですね(>_<) 機長や整備士に肩もみをしてくれる児童もいました。 これからも応援よろしくお願いします!

ドクターカー出動!~ドクターヘリ運休時の補完~

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町田です。 昨年度末からドクターヘリの日没が早まった時間を補完するドクターカー試行事業(通称『ドクターカー前橋』)ですが、今回8月31日からは悪天候などでドクターヘリが運休中にも補完できるようになりました。 昨日は1日雨模様でドクターヘリは群馬ヘリポートの格納庫から出すことができませんでしたが、朝からドクターカースタンバイを行っていたところ3件の要請をいただきました。平時の日中の救急搬送の重症度を考えると、3件は決して多い数字ではありません。現場でともに活動した救急隊や当院に直接搬送してきた救急隊とディスカッションを重ねていきながら、ドクターカーも積極的に要請できる土壌を作り上げていきたいです。   救急外来にドクターカー用資器材のスタンバイしています!  群馬県はドクターヘリで片道20分以内でほぼ全域をカバーできるので、1回の出動時間が1時間かかることはほとんどありません。ドクターカーの場合はさらに接触までの時間、現場活動時間が短く、昨日の事案でも覚知から病院到着までがほとんど30分くらいでした。 ドクターヘリ、ドクターカーともに初期治療開始時間とともに根治的治療開始時間の短縮が目的です。医療スタッフ派遣用の救急車から現場活動してきた救急車に乗り換え、救急車が止まっている間に行うべき最低限の処置を行ったらすぐに病院に向けて出発です。患者情報の病院連絡も追加処置もほとんどは動いている救急車内で可能です。『1分1秒でも早く』と時間を意識することも大切です。 ドクターカーはドクターヘリと同様に 救急搬送支援システムにも反映されています。 ドクターカー前橋は前橋市消防局の要請で前橋市内のみの対応であるため、ドクターヘリ運休におけるすべてを補完できているわけではありませんが、将来的にはドクターヘリ、ドクターカーの併用運用、ドクターカーの運航時間の延長なども視野に入れながら、試行事業とはいえかなり気合を入れて取り組んでいます!

3,4分の間にできること!~命のリレーの第一走者~

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町田です。 昨日は前橋市内の高校で救命救急講習会を開催しました。今年で記念すべき第10回になります。毎年高校1年生全員を対象に、午後の2校時を丸々使わせていただき、AEDの使い方、胸骨圧迫の仕方など、『目の前でひとが倒れた時にできること』を考えながら一緒に学ぶ時間にしています。 このコースのためにインストラクターとして県内5消防本部、11病院に加えて、昨年に引き続き県外からも参加していただき、病院関係者、消防職員あわせて80名の方々に集まっていただきました。前橋の高校の講習会ですが、この活動の趣旨に賛同して下さっていることに心より感謝いたします。 高校生になると部活動も盛んで、部活中の思わぬ事故から心肺停止状態に陥る可能性もゼロではありません。生徒さんたちにとっても決して無関係な話ではないととても真剣な表情で講習会に参加していました。 この高校では119番通報から救急隊が到着するまでに3,4分かかるそうです。呼吸停止後3,4分から急激に蘇生率が低下します。そのため救急隊が到着するまでに周りにいる皆さんが頑張らなくてはいけません。 高校生になると十分に力強い胸骨圧迫は可能でしかもAEDの操作はお手の物です。胸骨圧迫、AEDを知ることで、あとは皆さんの手を差し伸べてあげる“勇気”さえあれば、もっと多くの人を助けてあげることができるのです。 高校生のハートをつかんだ地元前橋市消防局のデモンストレーション、そして各ブース毎にインストラクターの様々な工夫で明るく楽しい雰囲気のなかでのあっという間の2時間でした。 このような活動の大切さを伝えたいと地元テレビ局2社、新聞社1社も資材に来ていただき、そして講習会終了後のインタビューで高校生が何人も『これからは目の前でひとが倒れた時に助けてあげるための行動ができます!』と答えてくれていたのがとてもうれしかったです。 消防、病院スタッフも心肺蘇生法を行いますが、本当に倒れた直後にはそこにはいません。どうしても僕たちの手が届かない最初の何分かを守るのは皆さんです。 『命のリレーの第一走者』になっていただきスタートを切ることが、僕たちまで命のタスキを引き継ぐためにとっても大切なことです!そしてこれからも僕たちは最初に胸を押してくれる皆さんの背中を押し続けます!!

車王国だからこそ守ってほしいマナー。

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町田です。 10月に入り日没が早くなったり、台風などの影響でドクターヘリの未出動が増えています。この1週間で28件の要請をいただきましたが15件は未出動で、うち天候不良による未出動が7件、日没制限による未出動が4件となっています。安全第一を考えて自然にはかなわないところがありますが、天候や日没がギリギリなところでも積極的に要請して頂ける消防の姿勢に感謝しています。 医師、看護師が救急車やドクターカーに同乗することがあります。当院から他院への転院搬送であったり、ドクターヘリの活動でもランデブーポイントから救急車に同乗して病院搬送することがあります。 その時にいつも思うことがあります。それは『周りの車が全然止まらない・・・』です。 救急車もドクターカーも緊急走行とはいえキチンと制限速度を守り、大きな交差点ではきちんと止まって左右の確認をしています。平気で追い越してくる車、その隙に交差点を横断する車が結構あるのです。時には路地から救急車の前に割る混んでくる車も・・・ 実態は図々しい運転だけではないようで、車の機密性が高くなったことや音響がよくなったことがあるようです。 救急車に同乗していて目の前に重症の患者さんがいるとき、リスクの高い移動の時間をできるだけ短くしたい思いが本当に強くなります。重症患者さんほど本当に1分1秒が惜しいのです。 群馬県は自動車保有率が日本一でや交通機関別旅客輸送分担率も自家用車が90%を占める、まさに『車王国』です。車王国であるからこそマナーをしっかり守っていただき、全国のモデルになってほしいと切に思います。

ただただ無事を祈るばかりです・・・

今年の台風は大型のものばかりです。これも異常気象のせいなのでしょうか?今回の台風26号も日本列島に大きな傷跡を残して行きました。 伊豆大島では今日の夕方の時点で死者17名、行方不明者42名とのことで、現在もなお地元の皆さんや警視庁、東京消防庁などにより懸命な救出作業が続いているとのことです。また各地で大きな被害が出ています。 1秒でも早く1人でも多くの方が救助されることを心より願っております。 また、台風の過ぎた後でも風が強かったり地盤が緩んでいたりなど、まだまだ危険な状態が続いています。皆さん、事故やけがに十分に気を付けください。当院もいつでも支援できる体制でスタンバイしています。

勇気をもって!~アンパンマンのように~

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町田です。 漫画家のやなせたかしさんが94歳で亡くなりました。心よりご冥福をお祈りいたします。 やなせさんといえば『アンパンマンの生みの親』として有名ですが、アンパンマン以外にも様々な活動で子供たちに勇気を与えてきた方です。僕も小学校の時から絵本を読んでいました。 出身の高知県のドクターヘリは、『勇気の花』号の愛称で機体に描かれたアンパンマンたちとともに、ドクターヘリの活動を通して地元の子供たちの希望となっています。 ☆それいけ!ドクターヘリ(高知ドクターヘリのブログ)  → http://drheli.blog55.fc2.com/blog-date-20110625.html 群馬県でも小児の救急症例はかなりあります。特にドクターヘリや当科で対応する小児の救急症例は、事故やけがなど予期せぬことが多く、本人はもちろんですが周囲の皆さんにとってもとても受け入れがたい状況であることがほとんどです。 救急医は大人だけを見るわけではありません。確かに大人に比べて小児の救急件数は少ないですが、その時は勇気をもって救命のために全力を尽くさなくてはいけません。そしてその子の救命によって周りのみなさんの笑顔を守ることが僕たちの使命です。 そうです、アンパンマンのように困っている人に勇気を持って手を差し伸べてあげることを忘れたくないですね。県境問題、高速道路の問題など、大人の都合ではなく困っている人のための視点で今一度みんなが考えれば、きっと日本の救急医療はもっと良くなるでしょう・・・

移動はとても怖いのです・・・~ドクターヘリによる病院への医療スタッフ派遣~

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町田です。 10月に入っても真夏日を記録するなど、相変わらず変な気候が続いています。しかし山々の木々が少しづつ赤や黄色に色づき始めたり、朝夕の涼しさ(山間部では寒さ)に秋を感じる今日この頃です。 患者さんにとって検査のために検査室へ移動したり、手術後にICUに入室するために移動したり、またとある病院の重症患者さんを3次救急対応病院へ転院する際の移動など、患者さんにとって様々な場面で『移動』という行為を伴うことがあります。 実はこの『移動』には危険がたくさんはらんでいます。 ERで重症患者さんを初療していて画像検査が必要になった際に、状態がまだ不安定(ショック状態の継続など)で検査室に移動すると検査中に急変するリスクがあります。例えば重症外傷患者さんを安定化させずに撮影に結構時間がかかるCT検査を行っていると、その途中でショック状態から心肺停止に陥る可能性があります。CT検査は『死のトンネル』と呼ばれたこともありました。 もちろん今は重症患者の診療ガイドラインがきちんと整っていて、そのような状態でのCT検査は少なくても3次対応病院では行われておりません。 また、とある病院で発生した重症患者さんについて3次対応病院に転院搬送の依頼が来ることがあります。搬送元病院の先生の情報から、時としてそのまま救急車で搬送すると搬送中に心肺停止に陥るリスクが高いと感じることもあります。もちろん搬送元の医師の初療により安定化させたのちに搬送できれば良いのですが、病態によってはなかなか安定化が困難な場合があります。 このような事例は結構あります。搬送中の救急車内では救急救命士と同乗した搬送元病院の医師や看護師の必死に努力されていますが、当院ER到着直後に心肺停止に陥るということもあります。 ドクターヘリ出動事案においても、現場出動はオーバートリアージ許容であるので中等症の症例もありますが、転院搬送についてはほぼ全例重症度が高く(だからドクターヘリによる転院搬送になるのですが)、実はとても緊張感が漂う活動になることも多々あります。ただある病院からある病院に患者を運ぶだけではなく、時には搬送前に救急科医による治療介入を行ってから、より安定化した状態で患者を搬送します。ヘリポートがない病院からのドクターヘリによる転院搬送ではその病院の直近ランデブーポイントで患者さんの

魂の再生(平成25年9月度 群馬県ドクターヘリ活動実績更新しました)

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Web担当の伊藤です。 平成25年9月度 群馬県ドクターヘリ活動実績を更新しました。 医療界は10月は学会シーズンです。その準備や、参加で更新が遅れてしまった事をお詫び致します。  筆者は仕事柄、医師と患者のインフォームドコンセントの場に同席します。 「インフォームドコンセント」とは医療法によって規定のある医療者にとっての、患者に対しての説明の義務であり 正式には「説明して納得の上での同意」と訳されます。 このインフォームドコンセントの基本的な概念は、『患者側が説明を求め、その説明をもとに医師に同意を与えると言う患者の権利』です。 つまり、医師は治療を行う前に、病状の説明、治療方針、選択肢、其々の予後についてわかりやすく正確に説明し 患者は医師側から示された選択肢から方針を選択します。もちろん、それは拒否する事も出来ます。 文章にすると大変事務的に感じられるかもしれませんが、実際にインフォームドコンセントの場にいると 説明する医師の情熱と、誠意を魂のレベルで感じる事があるのです。 医療系のテレビドラマでもよくあるセリフなので、皆さんも聞き慣れているかもしれませんが 「最善を尽くす」 医師は、手術や治療の前にそういった言葉を選択する事があります。 患者は知る事はありませんが、その言葉通り医師達は毎朝のようにカンファレンスを開き 患者さんの病状の経過についてを真剣に話し合い、今後の最善の治療方針についてを検討し合います。 そうやって医師達の経過観察の末に、患者さん達は社会復帰に導かれて行きます。 こうして、治療の甲斐あって、医師からみれば、検査所見、身体所見とも、もう社会復帰できるレベルに患者さんが達する。 大変喜ばしい状態なのに、長い闘病生活と休職の末、社会復帰どころか失業してしまう患者さんも少なくありません。 人間として、社会の厳しさ、生きる事の難しさ、自分の存在の意味を考察する機会を持つ方もいるのではないかと感じます。 心理学では「このままでは今の自分が壊れてしまう!」という心理状況を 「死」と表現することがあるそうです。 そして、「死」の後には、必ず「再生」があります。 速やかに「死」を通過して、「再生」へたどり着くには、 起こる出来事を怖れず、ただ「再生に必要なもの」と受け入れることです。 具体的には、必死で治療して社会復帰を目指してきたのに

0(ゼロ)と1(イチ)の違い。

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町田です。 本日未明に福岡市内で病院が火災となり、多数の犠牲者が出るというショッキングなニュースが飛び込んできました。けがをされた方の1日でも早い回復を祈るとともに、亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。 昨日は毎月恒例の高度救命救急センターBLS&AEDコースが開催されました。 当科看護師10名、事務職員1名に加えて、県内各病院から7名の看護師の計18名が参加しました。指導スタッフも当院医師、看護師7名に加えて、県内各消防、病院から5名の応援をいただきました。 「目の前で患者さんが急変した」という場面に遭遇した時に、いきなりテキパキと動ける人はそんなにいないと思います。医療関係者でも、病院外でそのような場面に遭遇した時に院内の時と同様に落ち着いて動くことができるでしょうか。それ以前に院内での急変対応でも落ち着いているかどうかも疑問です。 当院の教育研修推進センター(旧看護学校)で行っていましたが、コース中も当院に到着する救急車のサイレン音や離発着するドクターヘリのエンジン音が聞こえてきていました。 しかし現在は119番通報から救急車が現場に到着するまで平均8分以上かかっていて、ドクターヘリもいわゆる“どこでもドア”のように一瞬で到着するものではありません。 つまり救急隊や医師が到着するまでの時間は、すぐその周りにいる人たちがアクションをとらなくてはいけないのです。 でも急に「アクションを起こそう」と言われて何も知らないと何もすることはできないでしょう。約8分間ただただ救急車が来るのを待つだけになってしまうのでしょうか? いいえ、皆さんにはできることがあります。それは胸骨圧迫とAEDの使用です。たった一度話を聞いたことがあるだけで何か思い出すかもしれませんね。まったくのゼロよりもなにかイチでも知っていることがあれば、きっとアクションを起こすことができるでしょう。 一般市民への一次救命処置の講習も僕たちの大切な仕事です! 1週間後にとある高校の1学年240名に救急救命講習会を開催しますが、なんと80名を超える看護師、消防職員の方々がインストラクターとして集まってくれます。噂を聞きつけて埼玉県の救命救急士、茨城県の看護師さんも駆けつけてくれます。 インストラクターは普段の仕事で急変した患者さんの対応をしてい

世界レベルを目指して!~スタッフが増えることによる効果~

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今日は栃木の病院から来年度から当科の仲間入りすることが決まっている先生が見学に来ていました。実はすでに数名の来年度入職が決まっていて、さらに他病院で研修中の初期研修医の見学希望も届いています。 今年度もおかげさまで新しい仲間が増えて、当科の診療内容がより充実してきています。 ドクターヘリによるプレホスピタルへの積極的な介入だけではなく、重複要請時のセカンドスタッフの確保が多くの日で可能になってきています。またICU 12床に対して特に忙しい日勤帯は最低6名のスタッフを常駐させています。さらにECMOプロジェクトも始まりました。 入院を担当するスタッフ数も増加させ、より多くの患者さんを当科で担当させていただいたり、他科の患者さんの急変時などに積極的に協力させていただいているようにしています。 また今年度は昨年度より多くのスタッフが国際学会の舞台に立ちます。前橋から日本、そして世界への情報の発信力も少しずつついてきたように感じます。 まだまだ当科でやらなくてはいけないことはたくさんあります。夜間の救急外来の当直スタッフの充実、ドクターカー事業への本格参入、そして4,5年後に新病院への移転(ICU増床しますよ!)など、迫りくる課題はたくさんあります。 そして全国や世界のトップレベルの成績に少しでも追いつけるように日々の診療に取り組んでいます。 もし当科に興味のある方は、一度見学にいらしてください!いつでもお待ちしております。 このような業務をローテーションで行っています。 (右上の写真の患者はモデルです) もちろんDMAT、日赤救護班活動は欠かせないミッションです。 ☆当科紹介のホームページです  →  http://www.gunma-redcross-icuqq.com/index.html

やっぱり早期医療介入は大事です!

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町田です。 10月も1週間が過ぎましたが、群馬も蒸し暑い日が続いています。今日は二十四節季では「寒露」とのことですが、秋が深まる様子はまだ感じません。今年は秋が短くいきなり冬が来るようです。やっぱり異常気象なんですかね?体調管理には十分お気をつけてください。また、台風24号が猛烈な勢いで日本列島にやってきていますのいで、けがや事故などに十分気をつけて下さい。 重症患者さんを救命、社会復帰に導くこと・・・そのためには『早期の初期診療の開始』『迅速な決定的治療の開始』がそろっていないといけません。ここ最近は『迅速な決定的治療の開始のために』という話題をよく書いていましたが、今日はまた『早期の初期診療の開始』についての話題です。 8月に当院で但馬救命救急センターの小林先生にご講演をいただきましたが、その際に大切なことをたくさん教えていただきました。その中に「ドクターヘリの早期要請」の話題もありましたが、群馬県の9月のドクターヘリ要請のタイミングが、今までよりも数段早くなっていました。 これはとても良い傾向です。もちろん119番の電話の内容のみで100%覚知同時要請は無理だとしても、少しでも疑わしい時に「早くスイッチを入れる」という考え方が浸透してきたことを実感しています。 【2013年9月 消防本部ごとドクターヘリ要請タイミング】 現着前(≦5min)→救急隊現着前で、消防覚知から5分以内の要請 現着前(>5min)→救急隊現着前で、消防覚知から5分を超えての要請 現着後→救急隊現着後で、救急隊判断での要請 大部分の消防本部で救急隊現着前の要請が6割を超えています。ただし要請が数件のところから20件近いところもあるので、このグラフがそのまま各消防本部の要請タイミングの考え方を把握しているわけではありません。 要請は早いけどアンダートリアージがある地域、要請は多いけど救急隊判断までなかなか要請がない地域もあります。 原則は、アンダートリアージをゼロにすることです。アンダートリアージは直接患者さんに不具合を与えます。要請は遅い地域でも現場に出た救急救命士によって確実に重症患者がピックアップされているところもあります。しかし、急げば助かった可能性があったけど時間がたってしまったために患者さんに不具合を与えることもあるので、やはり時間を意識

『インストラクタートレーナー』~インストラクターを育てるインストラクター~

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町田です。 先月から日本上空を台風がたくさん通過しています。今度の台風24号もものすごいカーブを描いて日本列島を縦断するようです。みなさん、事故やけがなどに十分に気を付けてお過ごしください。 当科スタッフは日々の臨床現場のほかに、未来の救急医療や災害医療を担うスタッフを育成するための様々な教育・研修コースにインストラクターとして参加しています。  ☆(参考)当院を会場に開催している各種コースはこちら   → http://www.gunma-redcross-icuqq.com/seminar/index.html さらに各コースでインストラクターになる人材を育成するコース(インストラクターコース)のインストラクターとしての活動も行っています。いわゆる「インストラクタートレーナー」です。 昨日は名古屋で開催されたJATECインストラクターコースに中野センター長と僕が、本日当院で開催されたJPTECインストラクターコースに中村先生が参加しました。  ☆JATECコース → http://www.gunma-redcross-icuqq.com/seminar/jatec.htm l  ☆JPTECコース → http://www.gunma-redcross-icuqq.com/seminar/jptec.html インストラクターコースでは、インストラクターとしての責務、成人教育学について学んだり、実際にスキルやシナリオの指導をしながらそのテクニックや効果的なフィードバックの方法を学びます。 そのコースを指導するインストラクタートレーナーは、実は特別な教育の専門家ではなく普段は患者さんを診ている医師です。しかし、医療の現場でも後輩の指導や他の医療スタッフに教える機会は多々あります。また災害やドクターヘリなどで現場に出る際も、消防関係の方に医学的な指導やフィードバックをすることがあります。常に「教える」という行動はついて回ってきます。 「教える」=「学ぶ」ということではありません。インストラクターが教えた内容が学習者にとってそのまま学んだことになるのではなく、その教えによって「学習者の行動に変革をひきおこす」ことが求められます。そのための「教えのテクニック」をインストラクターを目指している方々に教えます。 もともと体育会系、気

2013年度上半期の高度救命救急センターの実績です。

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2013年度もあっという間に折り返し地点をこえました。 今年度も当科に多くの新しい仲間が入ってきて、今までの活動の質のさらなる充実化や少しずつですが各科に負担を強いていた部分への介入や新たな活動を行ってきています。 数が増えると必ず求められるのが実績です・・・ 2013年度上半期の高度救命救急センターの実績です。 *(注)速報値のため若干数がずれている可能性があることをご了承ください。 救急車やドクターヘリなどの受入件数は右肩上がりで増えています。また当科スタッフ数の増加とともに当科主治医で入院する患者さんの数もかなり増えています。 しかしながら救急外来の総受診者数や総入院数は伸びていません。もちろん患者さんの受診や入院数が減ることは市民の皆さんにとってはとても良いことなのですが、慢性的に入院ベッドコントロールに難渋しているという事態がずっと続いています。困っている患者さんを何とかよくしてあげたいというスタッフの思いは間違いなく強い病院ですが、一度入院して急性期の病態を過ぎた後に受け入れていただける慢性期のベッドを持つ病院、施設の不足、また自宅での介護が困難な現代社会の状況が大きな壁として存在しています。 しかしこのような状況でも、いままで地域の病医院、施設のスタッフの皆様と協力しながら地域全体でこのような問題に立ち向かってきました。これからもさらに連携を深めて様々な問題を解決しながら、当救命救急センターが24時間365日いつでもフル稼働できるようにしていきたいですね。 僕たち救命救急センターのスタッフの使命は、困っている患者さんに1秒でも早く手を差し伸べることです。これからも関係各機関のますますのご協力と市民の皆様のますますのご理解のほど、どうぞよろしくお願いします。 尚、数だけではなく治療成績についても数年前から様々な学会などで発表を始めています。こちらの方も現在スタッフ一丸で成績の向上を励むとともにデータの集積、解析を行っているところです。 皆さんにもっと安心と信頼をもっていただける救命救急センターを目指しています!